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月面は、荒涼とした世界だった。
見渡す限りの砂と、すぐ真上に迫る真っ黒な空。
サラサラと白銀に輝く世界は、光が届かない場所に入れば一瞬で伸ばした指先さえ見えない世界に様変わりする。
生命維持装置が身につけた人間の周囲に大気のバリアを作ることにより、人間は一定の時間だけならこの空間に立つことが許される。
だがそれが分かっていても、本能がもたらす恐怖はぬぐえない。
この場所には、地球上でいう『生命』というものが1つもないのだ。
「……かぐや」
それでも、その恐怖を払って、足を進める。
全ては、脳内を占めて消えてくれない彼女に、もう一度逢うために。
「かぐや……っ!!」
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