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 スクランブル交差点の信号を待ちながら、大型ビジョンに映る凌空(りく)を眺める。  アップで映されている横顔は、青や緑のレーザーを四方八方から浴びているにも関わらず、汗一つ掻いていない。  画面の右上には【LIVE】とあるが、音程もブレスもビブラートも全てCDと同じ。いや、正確には違うのかもしれないが、優羽(ゆう)には分からない。  「あ、凌空ー!」  反射的に声のしたほうを振り返ると、女子高生二人組が凌空を指差しては、お互いの肩を思い切り叩きあっていた。  「あぁ~ん歌うますぎぃ!付き合いたぁい!」  「皐月(さつき)の顔なら、一回はしてもらえるんじゃん?」  それは一体どんな顔だろう?と、元に戻したばかりの顔を再び彼女達に向けようとしたら、隣のサラリーマンも同じことを考えていたようだ。咄嗟に首を一周回し、大型ビジョンへと視線をやる。  今度、凌空にメールか電話で教えてあげようか。その女の子の連絡先早く!とか馬鹿丸出しな様子がありありと浮かぶけれど。  凌空を見つめながら、黄色い声を背中に滲ませながら、私も彼女達みたいになれたら良いのに、と思う。一回だけ、は勘弁だけど、純粋に、歌が上手い、付き合いたいって思えたらどれだけ良いだろう。  私の心には、凌空の歌声は届かないのだ。
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