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「よく見ててね」
義母はビデオテープをセットして再生させた。
『大丈夫?写ってる?』
そう言ってカメラに手を振るのは今は亡き母だった。
「お母さん……」
ビデオの母は咳払いをしてかしこまったように姿勢を正すと、再び手を振った。
『優海、元気?これを見てるって事はお母さん死んじゃって優海は20歳になったって事だよね?20歳の誕生日、おめでとうございます』
母はパチパチと拍手をした。
『お父さんと上手くやれてる?お料理覚えた?お母さんのお姉ちゃんにそこら辺頼んでおいたんだけどちゃんと教えてもらった?』
『一緒にいられなくてごめんね……。お母さんも本当は一緒にいたかったんだけど死んじゃったから……』
母は悲しそうな顔をする。
『いけないいけない、ちゃんと伝えるって決めたんだから。お母さんは優海と出逢えて本当に幸せでした。こうしてずっと入院してて母親らしい事何一つ出来なかったけど、優海がニコニコしながら毎日お見舞いに来てくれたのすっごく嬉しかったし、お母さんの楽しみだったよ』
『優しい優海の事だから病室にあるもの全部、お母さんの棺に入れてくれたんじゃないかなーって思ってます。……なんて言って全部入れてなかったとしても気に病まないでね?お母さんどっちにしろ嬉しいから』
母は慌てて付け足すように言う。
『きっと一緒に小箱渡されたと思うんだけど手元にちゃんとあるかな?お母さんからのプレゼントです、開けてみてください』
母の言葉に小箱を開けると、水色の美しい石のネックレスが入っていた。
『綺麗でしょ?その石はね、アクアマリンっていうの。海の精の宝物が浜辺に打ち上げられて石になったと言われてるの。人生の暗闇に陥った時、希望の光をもたらすとも言われててね、優海に何かあった時に勇気をくれるお守りにしてくれると嬉しいな』
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