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顔も知らない親戚の結婚式。
大人は楽しそうに昔話をしているが、子供の自分には、退屈でしかなかった。
「せめてブーケトスがブロッコリーなら面白いのに」
「いや、カリフラワーだろ」
親戚の子供たちが騒ぎ始めるのに、時間はかからなかった。
「というか、ブロッコリーとカリフラワーって何が違うんだよ」
「奏くん、わかる?」
小学生の集団の中で、高校生だった奏くんは、なんでも優しく教えてくれた。
だから
「馬鹿」
皆が騒ぐ中、その声だけはいやに響いた。
それはあまりにおそろしくて、ただ、黙って見上げるしかできなかった。
兄のように慕ってきた従兄に、そんな鋭い言葉を掛けられたのは初めてだった。
「あれには幸せが詰まってるはずなんだ」
目が合えばいつもどおり優しく微笑んでくれたけれど、怖くて目をそらすしかできなかった。
「というか、ブロッコリーは落ちたらフケツじゃん」
「いや、茹でたらいける」
そうか、彼は苦しかったんだ。
住所さえ記されていない写真では、真ん中の3人の男性が憎らしいくらいに笑っていた。
ブロッコリーの花言葉:小さな幸せ
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