黄金色の欠片

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「もうご飯だからそのくらいにしなさい」 母親の声で一気に現実に引き戻された。 「ソ連の映画なんて、今は滅多にやらないわね」 何気なく付け加えた母親の言葉に胸が沈む。 あの続きをまた見る機会はあるだろうか。 「リュドミラ・サベリエワも昔は綺麗だったけど、私らより上だから、もう随分な年でしょうね。ヘップバーンも死ぬ頃は鶏がらみたいだったし」 あの女優さんも今はおばさんなんだろうな。 というより、古い映画だからおばあさんの可能性すらある。 今の姿を目にして幻滅したいとは思わないが、あの映画の、あの物語の続きなら見たい。 自分の中ではまだ、あの水色の目のヒロインは涙を流してこちらを見詰めている。
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