黄金色の欠片

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「あ……」 目を見開いて固まった友達の声に振り向くと、お下げ髪のフランス人形じみた彼女の眼差しにぶつかった。 手には水彩を溶いたパレットとバケツを持っている。 美術部ももう片付けの時間帯だと今更ながら思い当たった。 先に視線を逸らしたのは彼女だった。 無言のまま体操着の背が遠ざかる。 後姿になると、腰の高い、脚の長い、東欧の体操選手じみた体型がいっそう目立った。 白い手に提げたバケツの中で揺れる黒い水がまるで底なし沼のように見える。 黄金色の葉が音もなく目の前を舞い落ちた。
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