黄金色の欠片

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それから日暮れの迫る帰り道を自転車で走らせながら、ずっと反芻し続けた。 あの子、驚いた風でも傷ついた様子でもなかったな。 ――どうせ、そんな陰口を叩く浅はかな人間だと思ってた。 振り向かない体操着の背中はそう告げていたように思えた。 多分、あの子はこれまでも自分の生まれについて無神経な言葉を投げつけられたことが何度もあったのだ。 俺もそんなつまらない、心ない人間の一人でしかない。 ――あんたに嫌われてたってどうでもいいよ。 ――私にとって端からその程度の存在。 胸の中に黒い底なし沼がサーッと広がっていく。 鈍く重い痛みを伴いながら。 相手を侮辱して傷付けたのは自分なのに、相手から罵倒されたより胸が苦しい。 恐らく、あの話を聞かれなくたって、彼女の視野に自分はいなかった。 だから、俺ももう気に懸けるのは止めよう。 そう自分に言い聞かせた。 だが、ふとした拍子にかっつり編み込まれた三つ編みの、くるんとカールした毛先が脳裏に蘇っては胸の奥を突き刺すのだった。 その後も彼女の態度は変わらなかった。 顔を合わせれば他の相手にもする風に挨拶する、用向きがあれば淡々と告げる。 そこには恨みや傷心も滲まない代わりに、好意や興味も匂わせない。 卒業後は顔を合わせる機会もなく、自分も彼女も地元を離れて別々の土地に進学・就職した。
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