黄金色の欠片

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***** 窓ガラスの向こうはすっかり夜に切り替わっている。 昼間はまだ紅葉の眺めなのに、夜になるとクリスマス仕様のライトアップが目に付く。 都会では気候は生ぬるくても、街の装飾はさっさと季節を先取りしてしまう。 ――この前、ナディアにも逢ったよ。 ふと、掛川の言葉が蘇った。 それはこの付近での話なのだろうか。 住谷は案外、自分と近いところで暮らしていて出くわさずにいるだけなのだろうか。 多分、あの事件がなくても、自分と彼女が付き合ったりすることは有り得なかった。 あちらは自分に好意も関心も無かったのだから。 もしかすると、彼女にとっては「事件」というほどのインパクトもなく忘れ去っているかもしれない。 自分という同級生の男子生徒の存在ごと。 中途半端に残っていたカップのコーヒーを飲み干す。 飲み下したコーヒーの残りはすっかり冷めて苦味だけが強く残った。
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