黄金色の欠片

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***** 住谷(すみたに)ナディアは中学校の三年間、同じクラスだった女生徒だ。 お父さんは大学でロシア語を教えている学者で、ルーマニア人のお母さんは中学に入った時点で既に亡くなっているという話だった。 お母さんが早くに亡くなってルーマニア語は出来ないとのことだが、お父さんが学者のせいもあってか成績は良く、特に英語や歴史はよく出来た。 運動系の部活ではなく美術部に入っており、美術室の前の廊下には定期的に彼女の絵や版画が掲示された。 どの作品にも「住谷ナディア」という下の名札を確認する前から、「多分、あれがあの子のだな」と一見して察せられる緻密さがあった。 しかし、何より、彼女本人の赤味のない白い肌に、古風なフランス人形じみた端正な面差しはそれだけで人目を引いた。 一方、焦げ茶色の髪をきっちり編み込んだお下げのヘアスタイルといい、装飾のない白のソックスといい、二十年前の地方の中学ですら既に古めかしい印象を与えた。 他の女生徒たちに混じっても、住谷には等身大の西洋人形が戦前の女学生のコスプレをしているような違和感が漂った。 笑顔や表情に乏しく、しかも女の子にしてはかなり低い声で話すので、単純にブスな子より却って不気味な感じもした。
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