黄金色の欠片

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実際、あの子は暗い、苦手だ、と煙たがる同級生も決して少なくなかったのだ。 うちの母親も授業参観で見かけた住谷を明らかにお気に召さない風だった。 「何だかハーフにしては、あの子、明るくハキハキした感じじゃないのね。やっぱり、お母さんが東側の人だからかな。昔からテレビで見てもアメリカの俳優やスポーツ選手はニコニコ笑ってるのに、ソ連だの東ヨーロッパの人はムスッとしておっかない感じだったし」 それから家の中なのに声を潜める調子にして付け加えた。 「お父さんは学者だなんて言うけど、昔のソ連だのルーマニアだのに行って文学研究なんてやってた人は、大体、共産党のシンパだからね。赤旗なんて取ってるお宅の子じゃないの?」 当時の自分には良く分からない話だったが、母親の口調と表情から、住谷とその家族が何らか避けるべき異分子として捉えられていることだけは良く分かった。
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