黄金色の欠片

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それはそれとして、住谷は入学初日、さっき逢った掛川杏奴(かけがわあんぬ)と廊下に並んで立たされた。 アメリカクウォーターの掛川の方がルーマニアハーフの彼女より髪が赤いことで教師から責められた時、彼女は激昂した。 「ハーフやクウォーターでも色んな人がいるって忘れないで下さい!」 正直、それが、住谷が人前でというか、自分の見ている前で感情を爆発させた最初で最後の場面だったように思う。 普段の彼女は自分の斜め前(基本的に席は五十音順だったので彼女はいつも自分の斜め前だった)の席に座って、プリントを配る時でもなければいつも背を向けている。 セーラー服の後ろ襟にはかっつり編み込まれた三つ編みのお下げが垂れていて、毛先だけがくるんと蝶の触覚のようにカールしている。 この子、本来は天然パーマで解くとクルクルカールした髪型になるのかな? 三年間、後ろの席に座って焦げ茶色のお下げ頭を眺めながら、よくそんな想像をしたものだ。
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