黄金色の欠片

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***** 「もしもし、え? 予約したのにまだ診察の順番も来てない? 分かったよ」 スマートフォンをポケットに仕舞い、駅の構内に向かって何となく歩き始める。 とにかくどこかで時間を潰そう。 駅舎内のテナントの立ち並ぶ廊下を歩くとオレンジの照明や洋菓子のふくよかに甘い匂い、そしてふわりと暖かい空気に包まれる。 思った以上に冷えた場所に長らく立っていたようだ。 ***** 「ホットコーヒー、お持ちしました」 「ありがとう」 窓辺の席なのでオレンジ色に暮れなずんでいく空が認められる。 さっき立っていた広場には白々と街灯が点り始めていた。 これから日が沈んでもっと冷え込むだろうからちょうど良いタイミングで移動したようだ。 街路樹の山吹色の葉が鮮やかに街灯に照らし出されて揺れている。
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