黄金色の欠片

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***** あれは、ちょうど今のような黄葉の季節だった。 この都会の今頃のような妙な生ぬるさのない、田舎特有の秋というより冬に片足を突っ込んだ気候だ。 休みの日に何とはなしにテレビを点けると、外国の映画が流れてきた。 カラーだが全般に黄ばんだ風な画面で古い映画だと分かった。 舞台設定も古い。 ドレスや軍服を着た男女が宮殿の舞踏会で踊るような時代だ。 人々が口にする歌うような言葉はとりあえず英語ではないということしか分からない。 と、怖いくらい澄んだ水色の目をした、艶のある髪を結い上げてすっくり細く長い首をドレスの襟から伸ばした女性が画面に現れた。 これがヒロインだ。 説明なしで見ても一目で察せられた。
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