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「へ?」
「俺の思い違いならいい。けど「思い違いだよ」
「・・・」
強い口調だった。それ以上を聞く事を許さない、そんな意思のある言葉だった。渚は座っている優を見下ろしていた。どうか、これ以上ダメな私を知らないでいて欲しい。
「___わかった」
優の瞳がこちらを真っ直ぐに見据えている。わかったと言ってくれた。よかった。渚はほっと肺の中の空気を吐き出した。
「いつか話してもいいと思った時に、話してくれる?無理強いはしないから。俺は渚さんの・・・。兎に角そういう事」
「___わかった」
渚の返事を聞くと、優はいつもの悪戯っ子のような笑みを浮かべてくれた。
すくっと立ち上がる優は向かい合って立つと頭一つ分くらい背が高い。腋の下に手を入れられてベッドに投げられた。その上に優が覆いかぶさってくる。流れる様な動きにされるがままだった。
「俺ね、今日勉強した事があるんだよね」
「__冗談でも年上のお姉さんを組み敷いたらダメじゃない」
出来る限り平静を装って語り掛けた。こんな事、冗談でされたら困る。ただでさえ増えていくスキンシップに困惑しているところなのに・・・。
「俺、冗談って言った?」
「・・・」
「綺麗な髪。__そんな潤んだ目で見ても放してやんない」
さらりと髪を梳かれて鼓動が跳ねる。いつもとは違う優の表情にごくりと喉が鳴る。何故、優がこんな事をするのかわからない。楽しくてやっているのか、確信犯なのか。止まれ高鳴り、これは何の意味も理由も無い行動なんだ。これこそ、ただの好奇心だ。
「ね、キスしていい?」
「__だめ」
「何で?」
「ただの興味でするものじゃないから」
「興味?俺、キスくらいした事あるよ?」
「___じゃあ尚更、理由がないからだめ」
「キスに理由が必要?」
見上げた優の表情は真剣そのものだった。私は大人としてどう言ってあげたらいいんだろう。
「ちぇっ。大人女子は年下男子に強引に迫られると断れないって書いてあったのに」
「・・・は?」
「そう漫画に書いてあったんだ」
ベッドサイドに腰かけなおした優はあっけらかんとそう言い放った。渚はふるふると怒りで震えていた。
「ふざけんな!私がどんな想いで「どんな想いでいたの?」・・・え?」
「だからどんな気持ちだった?」
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