第2章

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「___私は、私の赤ちゃんも殺してしまったの」 「・・・」  優は何も言わずにただ頭を撫でて、引き寄せてくれていた。言葉なんて要らなかった。ただ、誰かに聞いて欲しかった。辛かったねって言って欲しかった。零れる涙は頬を伝い優のシャツも濡らしていた。  優は何も咎めなかった。渚を責める事もせず、肯定する事もせずにただ回された腕の圧力が渚の全てを受け止めてくれていた。  いつの間にか眠っていた渚が目を覚ますと、隣でこちらを見下ろす優と目が合う。身体に当たる柔らかな感覚で、ベッドに寝ている事はすぐに気が付いた。何時から見ていたのかわからない優の両の瞳が優しく細められた。 「起きた?」 「___うん」 「俺、襲うつもりでここにいたんじゃないよ。渚さんが子供みたいに抱き着いて放れないから、仕方なくだよ」  言い訳するように早口で喋る優が可笑しくて、小さく笑ってしまった。その癖に、渚の腰に回された腕は緩まりはしない。暖かくないのに、心が温かい。自分が十八歳の時、こんなに大人びていただろうか。あんな話を聞かされて、あのような行動がとれるだろうか。優は何というか・・・凄い人だと思う。 「・・・ねぇ、渚さん」 「何?」 「俺のお願い、覚えてる?」  唐突に変わる話に戸惑いながらも、肯定の意思表示をした。優は無言でこちらを見下ろしている。そんなに見られると、恥ずかしくなってしまう。 「”俺を探して”でしょう?」 「そう。あれから一か月経ったし、そろそろ探偵ごっこ開始しない?」 「___そうね」  優を見つけるという事。それはつまり、別れを意味している。見つけなければ幽霊だけれど一緒にいられるとそういうニュアンスで優は話していたはず。それってつまり、優は早く見つけて貰って自由になりたいって事?  優を見上げると、読み取れない微妙な表情をしていた。嫌悪感で歪んでいるのか、泣きそうでそうなっているのか渚にはわからない。それでも、これまで一緒にいて楽しい感情を引き出してくれた優にお返しがしたかった。 「今日は遅いから、また明日。俺は・・・もう少しここに居てもいい?」 「___うん」  再び強く抱き締めてくる優の心の中が透けて見えたらいいのに。  ねえ、貴方は今、何を想う?
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