第2章

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「___っく」  無言で抱き締められていた。キッチンの床は冷たく、気持ちいい。あの時出会ったのが誠二ではなく優だったら・・・。見上げる優の表情は切なげで、今にも泣きだしそうだ。そっと手を伸ばして優の頬に触れると、すり寄るように優が頭を揺らす。 「私、優と何かあった?」 「__何も」 「そう・・・、でもキーワードは西高なのね」  小さく微笑む優は肯定しているようだ。このままYES・NO形式で聞いていけばすぐ解決するんじゃないかとも思うが、”どこを探せば見つけられる?”の答えはそんなものでは答えられない。  優は壊れ物を扱う様に渚の背中を撫でている。だんだんと気分が落ち着いてくると、いいアイディアが思いついた。ネットとは文明の宝だと思う。なんと画期的なものを発明してくれたのだろうか。優に大丈夫と告げてから立ち上がると、名残惜しそうに手が放された。ノートパソコンに電源を入れると、パソコンの起きる音がジーっと聞こえた。 「何をするの?」  不思議そうに首をかしげる優は、渚に触れないギリギリのところに座った。逆に当たらないか意識してしてしまうのに。  立ち上がったパソコンの検索画面を開き手早く入力する。 【西高校 優】  ・・・これだけでヒットするかな。でも物は試しである。エンターを押すと物凄い情報が出てくる。 【西高校期待の星 近藤優介選手】 【塚本優 西高校バレー部OB】 【喫茶店 ゆう 西高校前】  ・・・これを全部見ていくのは果てしない。これから行う作業を想像するだけで卒倒してしまいそうだ。 【西高校 優 2×××年 死】  とりあえずわかっている事と、今年の暦を入れてみた。少しでもヒット数が少なくなりますように。 「・・・これ」  膨大な量の検索結果の中に見つけたのは、西高校の裏掲示板だった。たしか学校で問題になって禁止になったはずだけど・・・、残ってたのかな。スクロールすると半年くらい前の更新が最後になっているようだった。 2×××年2月19日01:36 名無し 私も新聞で見たよ。びっくり。 2×××年2月19日00:58 名無し 今度はブラザーかよ 2×××年2月18日23:55 名無し なんかあの時思い出すな。 「池田優、自殺・・・?」  指は震えていた。
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