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「探すってどういう事?・・・まさか、遺体を探して欲しいって事だとしたら全力でお断りします。私、ホラーは苦手なんだよね」
「あはははは。そう、そうだよね。確かにその答えはYESでもあるしNOでもある。けど___俺、自分の事を話せないんだ」
「・・・」
「だから俺の事、探してくれる?」
よくわからないお願いに簡単に頷く事は出来なかった。曖昧な言い回しに空元気を足すと、不信感しか湧いてこない。
「それって断ったらどうなるのかな?」
「もちろん、一生付きまとうよ」
にっこりと笑う優の笑顔は、可愛いが憎たらしい。綺麗に上がった口角も、笑うと細まる二重の目もこれまでたくさんの女性を射止めてきたのだろう。
「それって、いわゆる・・・祟ります宣言かな?」
「そんな怨霊みたいな扱いしないでよ。もちろん、渚さんが俺と一生一緒に居たいって思うんなら、探してくれなくたっていいよ?」
「___一生って、守護霊みたいに影からこっそりと見守ってくれるって事?」
「何言ってるの?隣で一生”文句”を言い続けてあげるよ」
二人掛けのソファに座った渚を、床に座った優が見上げて悪戯っぽく笑っていた。正直、開いた口が塞がらなかった。この青年に一生付きまとわれるという事はどういう事かと考えていた。
トイレに入っている隣にいる優。恋人とキスするときに隣で見つめている優。四十歳の私といる優。しわしわにしおれたおっぱいをブラジャーに直す隣にいる優。優に看取られる私。___冗談じゃない。
「ひ、ヒントくらい貰えるの?」
「それって探してくれるって事?」
「___難易度を測るだけ」
「そう。・・・そうだなあ、ヒントは内容によるかなあ」
「・・・」
「でも、渚さんは必ず探してくれるはずだよ」
酷く喉が渇いている気がして、自分にだけ用意した麦茶をごくりと飲み込んだ。そのはずなのに、自分の唾液がねっとりと喉に張り付いている感覚がする。優には、幽霊には予知能力みたいなものが備わっているのだろうか。なんで私なのだろうか。
「俺は困らせたかったわけじゃないんだけど、結果的にそうなるよね。でも、渚さんじゃなきゃダメなんだよ。貴女じゃないと___」
優の想いが込められた手が差し出された。まだ年端のいかないこの青年に何があったのだろうか。少し興味が湧いた。
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