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「それで、どこに行くの?」
「そうだなあ・・・映画でも見る?」
「いいね。仕事は何時から?」
「十四時」
「え?そんな時間から開いてるの?呑兵衛は凄いな」
顎をさすりながらふむふむと頷いている優に思わず口角が上がっていた。それに気付いた優は、なんだよと照れくさそうに歩調を速める。
「ふふふ、優は子供だね。開店は十七時。飲食店には仕込みってものがあるの」
「うるせえ。子供子供って・・・、俺は十八歳。立派な大人だってば」
「子供って言われてむくれるのが、子供って言ってるのよ。はははっ」
「くっそー。なんで俺はもっと長生き出来なかったんだーっ」
この感じ、懐かしい。
渚は胸がきゅうっと締め付けられる感覚に苦笑をこぼした。思い出したくないのに、温かくにじり寄ってくるあの頃の記憶。人生の最高潮とどん底を両方経験した一年は、自分を守るために無かった事にした。それなのに、優が現れてから思い出してしまうのは、やっぱり”年齢が近い”からかもしれない。
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