第二章「森の奥に住む木こりの男の話」

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その日の朝、男はいつもと違う感覚に目が覚めた。 …なんとなく、落ち着かない。 いつものように朝食を作るもやはり落ち着かない。 男は、思う。 …それは、今朝見た夢のためか。 夢の中で見た、あの椅子のせいか…。 …男は森で椅子を見た。 赤い布敷きの、今までみたことがないような豪華な椅子。 まるで、王様が座るような美しい椅子。 それを、男は見つめる。 いつものように森で木を切ろうとしたとき、 ふと行こうと思い立った道を通った木々の向うで男はそれを見つけた。 …これは何か、どうしてこんなところに椅子が…。 そう思いつつも、男はなぜか確信する。 …この椅子に座ろう。そうすれば、人生が変わる気がする…。 そうして男は椅子に座り…。 そこで、男は目を覚ましていた。 …あれは夢だったのか…。 しかしどこか、たったいましがた自分があの場所にいた気がする。 幸い、男の変化に父親は気づかない。 いつものように男の作るゆでたじゃがいものスープを咀嚼し、外に積んでおいた 薪の乗った荷車を押して街へと向かう…そして男も片付けをし斧を持って外へ出た。 外は、いつもと変わりない。 昼なお暗い静かな森…。 そうして男はいつものように森の奥へと木を切りに行き…。 …ふと、気がつく。 「…ここは…。」 見慣れたはずの森。 しかしその向うには街へと続く道が見えており…。 …そう、そこは夢に見た光景と良く似かよった場所であった。 男は、それを見て歩を進める。 …そう、そうだ。この先、この道がうっすらと見える木々の先。 …その先にあの椅子がある…! 夢と同じ光景に、今まで感じたほどがないほど気分が高揚する。 男の歩みは早くなり、ついには走るまでとなった。 …もう少し、もうちょっと…! そして、男があと少しで道へと乗り出すその瞬間、ふと視界の隅に横切るものがあった。
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