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「ねえ、ママ?」
「なあに?」
「咲希はサンタさんからプレゼントもらえるでしょ?」
「そうね、お利口さんだから今年も来てくれると思うわよ?」
「ママもパパからもらうでしょ?」
「ふふっ、そうね。パパ、今年は何くれるかな?」
「パパもママからもらうでしょ?」
「そうね、パパお仕事頑張ってるからご褒美あげなくちゃね」
「……じゃあね?」
「なあに?」
「サンタさんには誰があげるの?」
「そうねぇ、誰があげるのかしら」
「サンタさん、誰からももらえなかったらどうしよう」
「うぅん、そうねえ。きっと、サンタさんの奥さんがあげるのかも」
「サンタさんの奥さんはサンタさんの欲しいもの、分かるの?」
「そうねぇ、きっと分かると思うわよ?奥さんだもの。ママだってほら、パパの欲しいものちゃんとあげてるもの。サンタさんの奥さんもきっとサンタさんの欲しいものあげてるわよ」
「よかったぁ」
「だから、ね?もう咲希は安心して眠りましょ?」
「うん、そうする。おやすみ、ママ」
「おやすみ、咲希」
彼女の母は安心したように目を瞑る吾子の頭をそっと撫でると、部屋の扉を静かに閉めた。
夜は更け、サンタクロースがこっそりと咲希の部屋へと忍び込む。
ぶら下がった靴下には欲しがっていた人形とそのドレス。
喜んでくれるだろうかと、つい口元がほころぶ。
すると、その靴下に手紙が入っていたのに気付いた。
『サンタさんへ』と書かれている。
まだ覚えたてのサは短い棒と長い棒とが逆に書かれていて、くすっと笑いが漏れ出て慌てて口を塞ぐ。
ベッドで一人気持ちよく眠っている少女を確認し、安堵するとその手紙の封をこっそりと開けた。
中には彼女がとても大切にしていた、アニメの女の子のシールが一枚入っていた。
いつの間に……。
だから、眠る前にあんな事を。
一体いつから気に掛けて、そしてその小さな胸を痛めていたのだろうか。
『多少勉強できなくても優しい子に育ってくれたら良いね』
彼女が生まれたときに両親が願った事だった。
子育てに悩まない親はない。
まして初めての子どもなら。
本当にこれが正しいのかと何度も不安になって、あの時こうしていたらと後悔することもたくさんあって。
でも……。
大丈夫。
ちゃんとその気持ちは育っている。
「優しい子に育ってくれてありがとう」
サンタクロースは寝息をたてる幼子の頭をそっと撫でると、部屋の扉を静かに閉めた。
了
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