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だきますわ」
少女は一歩二歩と軽やかな足取りで下がると、天を仰ぎ、両手を高く上に上げた後、胸で組むとそのつぶらな瞳を瞼で覆い隠した。さぁっと一陣の風が彼女と私の間に吹いた。祈る少女には不思議な美しさが宿っていた。と、その瞬間に彼女は年相応の悪戯っぽい笑みを浮かべ、「おじさまに幸運がありますように!」と言うとどこかへ駆けていってしまった。それまでの時間があまりにも短くて、私は全く拍子抜けしてしまった。
気を取り直して、友人と待ち合わせをしている珈琲が美味な喫茶店へ向かうと、何やら道に光るものが落ちている。拾ってみれば、それは純銀製の、緻密な彫金がされたボタンであった。家で磨けば、見る価値のあるガラクタになるだろう。私はそれをポケットに入れてまた歩いた。
喫茶店に着けば、丁度友人も入ってくるところだった。私はここまでに起きたことを話すと、友人は笑いながら「やぁさっそく効果があったじゃないか」と言った。私は最初その意味がわからなかったが、どうやらこのボタンのことだと理解した。
「確かに売れば80ギメルくらいになるだろうか」
「どうだろうね、最近は銀の価値は下がっているだろうし」
「しかも一つだけだ、
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