そこでしか話せない~インターバル~

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「どういうことだ? おれは人間になれたんじゃないのか?」  ジンジャーの体から力が抜ける。  青年は腕を放し、息をついた。 「お客様が人でいられるのはここにいる間だけです」 「はあ?!」 「ユイトさん……、店長から聴いていないんですか?」 「知らん! 気づいたらこうなってたんだ!」  ジンジャーはエプロン姿の青年に両手の指を見せつけた。 「えっと……。お客様はどなたかをここへ招かれたんですよね?」  青年が戸惑い出す。 「なに言ってんだ? おれはここに勝手に連れてこられたんだぞ! 招くもクソもあるか!」  胸ぐらを掴むと青年は引きつりながら、落ち着いてくださいと言った。 「だいたいお前は何なんだ? ここはどこなんだよ!」 「放し……。苦し……い……」 「放してもらいますよ、手。そいつ、俺のなんで」  よく通る男の声に気を削がれる。  やけに目つきの悪い男を視線が捉えるのと同時に、青年を掴んでいた手を引きはがされた。  ジンジャーは勢い余って赤い絨毯へと尻餅をついた。  青年がゲホゲホッと咳き込む。  目つきの悪い男がその背を撫でた。 「なんだよ。なんなんだよ……」  ジンジャーはただ幸に会いたかっただけだ。  幸せになって欲しい人の沈んだ顔を見たくなかった。  ただ、それだけ。 「おれは会いに行かなきゃいけないんだ。あの子を助けてあげなきゃ」  青年と男が顔を見合わせる。 「あの、よかったら、話してもらえませんか? 力になれることがあるかもしれません」  青年が手を差し伸べてくる。  躊躇ったように、でも、とてもやさしい表情で。  ジンジャーはそこで初めて、青年の腕に包帯が巻かれていることに気づいた。  この喫茶店から出たらジンジャーはぬいぐるみに戻ってしまうと彼は言っていた。  そうならないように、青年は傷を負った腕でジンジャーを止めてくれたのだ。 「乱暴してすまなかった」  ジンジャーが伸ばした手を青年がにっこり笑って引き上げてくれる。  体も心も軽くなった気がした。
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