そこでしか話せない~インターバル~

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 カウンターへ座ると葛西は自分達のことやこの『名もなき喫茶店』の話をした。  葛西によると喫茶店の店主はユイトという神様で男の姿をしているらしい。  ジンジャーが幸の部屋で聞いた声も男だった。  あれがユイトの声だったのだろうか?  葛西もここのシステムを熟知しているわけではないようだった。  人間に毒入りの餌を与えられ死ぬはずだったクロを、神様であるユイトがあの世へ橋渡しをせず喫茶店で雇い、クロの賃金の代わりに葛西はこの喫茶店を行き来することを許されているらしい。 「潤いがなかったのでありがたいですよ、ほんと」  珈琲カップを傾け、男が瞼を閉じる。 「職業柄、色々な依頼を受けるんですが、依頼主の希望にそえない結果になることもあったりして。引きずらないようにしてはいるんですが、こちらも人間なんで完全に消去できないと言いますか」  この男は元から人なのか。 「なんの仕事してるんだ?」  葛西が流し目をくれる。 「生前のあなたと同じですよ、ジンジャーさん。いえ、中川圭太さん」  脳と心臓に杭を打ち付けられたような衝撃に息がつまる。 「俺の初めての依頼主はあなたの奥さんです。十九年前、あなたをひき殺した相手を探して欲しい、と。あなたは人の闇に足を踏み入れてしまった。奥さんが言うにはあなたが亡くなる三日ほど前から、無言電話が何度もかかってきたとか。もちろん、奥さんはあなたに相談した。けど、あなたは身重な奥さんを心配させたくなかったからか、間違い電話だと受け流した」  ジンジャーは強く脈打つ心臓を宥められない。 「残念ながら俺は犯人を見つけられませんでした」 「どうして、俺がそいつだと?」 「あなたの写真を奥さんが肌身離さず持っていましたから。あと、お子さんの名前が幸さんでした」  葛西が口からでまかせを言っているようには見えない。  ジンジャーの頭に浮かぶ映像や心得ていることも、ジンジャーが幸の父親であるというなら説明がつく。 
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