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自分とそう歳の違わない若者ではないか。勇者とは、父のように貫禄があり、それなりの雰囲気を醸し出しているものと思っていたのに、このダムガンという勇者には、そんなものが何もない。
ダムガンも驚いていた。
まだ幼さの残る顔立ちだが、こんなに美しい娘をダムガンは見たことがなかった。
「今は引退したが、元はアザム王国の勇者だった私の父リュウから、この国の勇者殿に渡すようにと書簡を持ってきました。私はリュウの娘リン。さっそく読んでいただきたい」
リンは疑うような目でダムガンを見ながら、袋から手紙を取り出した。
ダムガンは手紙を受け取り、読んだ。
予想した通り、ダバイン王を倒すために立ち上がるので、助太刀願えるのなら協力を頼みたいといった内容だった。
読み終えるとダムガンはリンを見た。
リンもじっとダムガンを見ている。
「あなたたちは二人で旅をしてきたのですか?」
ダムガンは手紙の返事をする前に訊いた。
「そうだが、何か?」
「いえ」
さすが勇者の娘。魔物の潜む地を旅してくることなど、何でもないといった風だ。
「できれば今すぐ返事を聞かせていただきたい。もし協力できぬのなら、私は明日にも国に帰ります。協力していただけるのなら、ここに留まり国への案内役をつかまつる」
「もちろん協力するつもりです」
ダムガンはこの日を待っていたのだ。
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