第一章 綺麗事は罪

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「麻宮!俺はお前が好きだ!」 何回聞いたか分からないぐらいこのセリフは聞いた。 そして、何回このセリフをあの男に言っただろうか? 「ごめんなさい。僕は男なので無理ですよ」 それでもあの男は諦めない。 なんせ、綺麗事を愛しているのだから。 「俺はそうは思わない!同じ人間同士誰を好きになっても誰も止めない!」 まただ、世間はトランスジェンダーと認知したような言い方をすれど、前と見方も距離も変わっていない。 根本は異物扱いだ。 恋愛が自由?それは綺麗事でしかない。 自由なら、誰かに見つからないようにする恋愛も自由と言えるのか? 僕はそうは思わない。 だから恋愛が自由だなんて机上の空論綺麗事でしかない。 「また綺麗事ばかり言ってやめてくださいよ。僕をからかうのは!」 そう麻宮は眞下に言い駆け足で離れた。 「ちょっと麻宮!」 眞下は止めようとしたが、届かなかった。 「綺麗事なんかじゃないのにな…」 そう呟きながら、眞下はその場を後にした。 眞下と出会ったのは今から1年前の話 当時僕はこの広告代理店「MUSE(みゅーす)」に新入社員として入り、僕の教育担当として配属されたのが眞下だった。 「麻宮遊星(あさみやゆうせい)です。よろしくお願いします!」 「初めまして麻宮君!私は今日から君の教育担当に配属された眞下だ。眞下樹(ましたいつき)だ。よろしくな!」 そう、初めの第一印象はよかった……。
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