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5 話
「華野さんは、お帰りですか」
「ええ、これから帰るところです」
「では駅までご一緒に……」
「それは構いませんが、とにかくありがとうございます」
どことなくぎこちない会話を交わす蛍と翔。
総務の部署を二人で出る。
蛍がロッカー前で通勤着に着替えるまで翔が待つ。
それから同じエレベーターに乗り、一階まで降りる。
不思議なことに他の社員が一人も乗って来ない。
二人には会話をする話題もないので少し気まずい。
それで……ということもないが、
「あの、これ、付けてみます」
蛍が黄色いカピパラを袋から取り出す。
そんな蛍の動きを翔が黙って見つめている。
携帯ストラップの取り付け紐と格闘すること数十秒、見事にカピパラが蘇る。
「あの、いただいた方も一緒に付けちゃっていいですか」
「全然構いませんが……」
「では付けてみます」
黄色いカピパラの左隣にピンク色のウサギが並ぶ。
「可愛い……」
思わず蛍が声を発すと、
「女性は、そういうのが好きですよね」
翔が言い、やっと会話らしい会話が始まる。
……と思ったところでエレベーターが一階に到着。
翔が先にエレベーターを降りる。
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