3 翔

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「ねえ、蛍は何時、健斗のこと好きだって想ったの」  中村葵に訊かれ、蛍は惑う。  そういえば、何時なのだろうか。  中学の時、初めて、好きだ、と告白されたときか。  それとも高校時代の二度目の告白のときだろうか。  あるいは大学三年時、プロポーズされた瞬間か。 「わからない」 「えっ」 「いや、だからわからない」 「どうして……」 「どうしてってこともないけど」 「……」 「うーん、とね。嫌いだったことは、これまでない。でも、好き……かって訊かれると違うような気もする。考えれば考えるほど、わからない」 「それくらい空気みたいな存在なのね」 「ああ、そういうことなのかな。でも、やっぱり違うような……」 「全然違わないんじゃないの。記憶の最初から好きだった……ってことでしょ。羨ましい」 「そうなのかな」 「あーあ、蛍には健斗がいるし、あたしは翔くんを狙うかな」 「あの人だとライバルが多過ぎない」 「そんなの、恋の障害にならないわ」 「恋か……」 「恋よ」 「ねえ、一つ質問していい……」 「どうぞ」 「葵が翔くんに恋をしたとして、葵は、そのときどういう気持ちになるの……」 「蛍、アンタ、頭、おかしいんじゃないの」 「いいから教えてよ」 「うーん。じゃ、まず、甘酸っぱい」 「それから……」     
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