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「ねえ、蛍は何時、健斗のこと好きだって想ったの」
中村葵に訊かれ、蛍は惑う。
そういえば、何時なのだろうか。
中学の時、初めて、好きだ、と告白されたときか。
それとも高校時代の二度目の告白のときだろうか。
あるいは大学三年時、プロポーズされた瞬間か。
「わからない」
「えっ」
「いや、だからわからない」
「どうして……」
「どうしてってこともないけど」
「……」
「うーん、とね。嫌いだったことは、これまでない。でも、好き……かって訊かれると違うような気もする。考えれば考えるほど、わからない」
「それくらい空気みたいな存在なのね」
「ああ、そういうことなのかな。でも、やっぱり違うような……」
「全然違わないんじゃないの。記憶の最初から好きだった……ってことでしょ。羨ましい」
「そうなのかな」
「あーあ、蛍には健斗がいるし、あたしは翔くんを狙うかな」
「あの人だとライバルが多過ぎない」
「そんなの、恋の障害にならないわ」
「恋か……」
「恋よ」
「ねえ、一つ質問していい……」
「どうぞ」
「葵が翔くんに恋をしたとして、葵は、そのときどういう気持ちになるの……」
「蛍、アンタ、頭、おかしいんじゃないの」
「いいから教えてよ」
「うーん。じゃ、まず、甘酸っぱい」
「それから……」
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