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 山口翔が踏んだのは蛍のスマートフォンのアクセサリーだ。  詳しく言えば黄色いカピパラ人形。 「あっ」  山口翔が慌てて足を上げる。  が、その下のカピパラはバラバラだ。  蛍にはカピパラの小さな目がバッテンに変わったように見える。  山口翔がその場にしゃがみ込み、自分が毀したスマホ・アクセサリーの欠片を拾い上げる。 「ごめんなさい。お怪我はありませんでしたか」  そこに蛍が声をかける。 「いえ、オレの方こそ、済みません」  翔が蛍を見上げ、頭を下げる。  慌てて蛍も翔の隣にしゃがみ込む。 「毀しちゃいましたね。弁償します」 「いえいえいえ、いいんです。安物ですし……」 「しかし、そういうわけには……」 「悪いのは、わたしですし……」 「参考に……これ、」  と翔が自分が踏んで毀してしまった黄色いカピパラを右掌に握り、蛍に言う。 「預かっておきますから」 「あの、だから、いいんです」 「では後日……」  素早く立ち上がると翔がエレガントにその場から歩き去って行く。  一旦、そんな翔の姿に向いた女性社員の視線が一斉に蛍に注がれる。 (痛っ……)  マンガや小説で読んだことはあるが、本当に視線が痛いのだ。     
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