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「あなたの苗字、華野(かの)さんって仰るんですね。この前、伺わなかったので探しました」
定時退社組は既に会社にはおらず、残業組は仕事を始めている。
また、そのとき総務部にいたのは殆どが男だ。
だから視線は痛くない。
いや、少しは痛いか。
蛍がそんなことを考えていると、
「一応新しいのを買ったんですが、修理もしてみて……」
そう言いつつ翔が蛍に透明な袋に入った黄色いカピパラを手渡す。
粉々に砕けた部分はパテで修復したようだ。
割れた破片をくっ付けたジグザグラインは――溶剤でも塗ったのか――それほど目立たない。
「それから、こっち……」
ついで翔が蛍に手渡したのがウサギのフィギア。
大きく、まん丸い目がとても可愛い。
「ありがとう。修理してくれて、それから新しいのも買ってくれて……」
蛍が感激のあまり声を張り上げる。
それを、まだ社内に居残っていた中村葵が渋い顔で見つめている。
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