4 動

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「あなたの苗字、華野(かの)さんって仰るんですね。この前、伺わなかったので探しました」  定時退社組は既に会社にはおらず、残業組は仕事を始めている。  また、そのとき総務部にいたのは殆どが男だ。  だから視線は痛くない。  いや、少しは痛いか。  蛍がそんなことを考えていると、 「一応新しいのを買ったんですが、修理もしてみて……」  そう言いつつ翔が蛍に透明な袋に入った黄色いカピパラを手渡す。  粉々に砕けた部分はパテで修復したようだ。  割れた破片をくっ付けたジグザグラインは――溶剤でも塗ったのか――それほど目立たない。 「それから、こっち……」  ついで翔が蛍に手渡したのがウサギのフィギア。  大きく、まん丸い目がとても可愛い。 「ありがとう。修理してくれて、それから新しいのも買ってくれて……」  蛍が感激のあまり声を張り上げる。  それを、まだ社内に居残っていた中村葵が渋い顔で見つめている。
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