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6 帰
地下鉄の改札を過ぎても二人はまだ一緒だ。
「もしかして蛍さん、K線ですか」
「……って尋ねるってことは、翔くんもK線……」
「当たりです」
「もしかして同じ駅だったりして……」
「まさか、それはないでしょう」
「ウチはW駅よ」
「オレはI駅だから三つ前ですね」
思ったより近い、と蛍は思う。
それが、そのまま口から出る
「思ったより近いのね。でも、これまでわたし、翔くんを見かけたことがない」
「距離は近くても隣町だと自治が違って会わない、ってことはありますよ」
「隣町の小学校とかね。だけど隣町だったら中学校で一緒になるはず」
「私立だったらなりませんよ」
「翔くんは私立だったの」
「ええ、中学校のときから……」
翔が照れたように口にする。
その仕種を蛍は可愛いと思う。
「わたしは受験、高校が最初だな。次が大学で、その次が会社……」
「免許は……」
「ああ、そっちが先か。滅多に運転はしないけどね」
「他に資格とかは……」
「わたしは資格魔じゃないのよ。考えてみると、よく会社に受かったな」
「点数が取れて、面接が良かったんでしょう」
「結局、そういうことになるよね。実際は運だとしても……」
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