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「いいんですよ。元々オレが蛍さんのスマホ・アクセサリーを毀したのが始まりだし……」
「それを言ったら、わたしが葵に押されたのが始まりよ」
蛍は言ったが、翔に意味がわかるはずもない。
「ええと、わたしが躓いたのがいけないんだわ」
咄嗟に蛍が言い直す。
翔の顔を見ると特に疑問には思わなかったようだ。
漸くホームの先端まで至り、二人で次の電車を待つ。
が、本当に座る気ならば、もう一本待つ必要がありそうだ。
周りを見ると殆どの人たちがスマホの画面を覗き込んでいる。
ゲームか、SNSか、あるいはメールに忙しいのだろう。
蛍はゲームをしないし、SNSの発信も稀だ。
ゲームはこれまで面白いと思ったことがなく、SNSに毎日上げるような話題もない。
健斗や家族、それから友人たちにメールを送ることはもちろんあるが、それくらいだ。
退屈を紛らわしたいと思ったときには本を読む。
あるいは音楽を聴く。
「やっと座れますね」
電車をもう一本遣り過ごし、やっと座席に座れた翔が左隣の蛍に言う。
「翔くんは立ってる方が好きなんじゃないの」
「その日の気分や体調次第で決めますよ。オレ、無理はしませんから……」
またもや会話が年寄り染みてくる。
が、次の蛍の一言で流れが変わる。
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