6 帰

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「いいんですよ。元々オレが蛍さんのスマホ・アクセサリーを毀したのが始まりだし……」 「それを言ったら、わたしが葵に押されたのが始まりよ」  蛍は言ったが、翔に意味がわかるはずもない。 「ええと、わたしが躓いたのがいけないんだわ」  咄嗟に蛍が言い直す。  翔の顔を見ると特に疑問には思わなかったようだ。  漸くホームの先端まで至り、二人で次の電車を待つ。  が、本当に座る気ならば、もう一本待つ必要がありそうだ。  周りを見ると殆どの人たちがスマホの画面を覗き込んでいる。  ゲームか、SNSか、あるいはメールに忙しいのだろう。  蛍はゲームをしないし、SNSの発信も稀だ。  ゲームはこれまで面白いと思ったことがなく、SNSに毎日上げるような話題もない。  健斗や家族、それから友人たちにメールを送ることはもちろんあるが、それくらいだ。  退屈を紛らわしたいと思ったときには本を読む。  あるいは音楽を聴く。 「やっと座れますね」  電車をもう一本遣り過ごし、やっと座席に座れた翔が左隣の蛍に言う。 「翔くんは立ってる方が好きなんじゃないの」 「その日の気分や体調次第で決めますよ。オレ、無理はしませんから……」  またもや会話が年寄り染みてくる。  が、次の蛍の一言で流れが変わる。     
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