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高望みをしなかったのが逆に良かったのか、どちらも上場企業(ただし上場先に差はあるが……)に就職する。
大学を卒業し、それぞれの企業に就職するまでの間に結婚式。
だから優雅な新婚旅行には行っていない。
将来的に海外旅行を愉しもうという約束を健斗が蛍と交わし、先送りだ。
けれども蛍は、そのことに文句を言ったりしない。
『時間とお金がないから当然だよね』
明るく健斗に言ったものだ。
子供の頃から蛍に一途だった健斗は他の女性と付き合ったことがない。
だから新婚初夜は大変なことになってしまうが何とかそれも乗り切っている。
幸せな夫婦が誕生したのだ。
会社に入った健斗は慣れない仕事を覚えるのに苦労するが、家に帰れば蛍がいると思えば苦にならない。
だから仕事の都合で蛍の帰りが遅くなったときには、とても辛い。
蛍が地方支社に出向き、一泊したときには、本当に寂しさで死にそうになる。
ホテルに落ち着いてから蛍が電話をかけてくれなければ、泣いていたかもしれない。
男として、いや人間として情けないが、それくらい健斗は蛍が好きなのだ。
その蛍が山口翔に惚れてしまう。
蛍自身、最初は自分が恋に落ちたことに戸惑っていたから健斗も簡単には気づけない。
けれども恋する女の気持ちはわかるものだ。
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