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眼前の砂漠は、どこまでもいつまでも開けている。 周囲にはなにもない。 闇ではない。 なのに空も地も空気も色を失い、モノクロームの世界はさらさらと乾いた灰色の砂に支配されている。 あぁ、またこの夢、と夢のなかの私は虚ろに思う。 薄い眠りの膜を破りさえすれば、簡単に抜け出せる世界。 納得する。 だのに心のなかに生じた波は振幅を大きくして、じょじょに息苦しさを募らせる。 それは、いつもの順で。 「先生」 夢のなかの私が呟く。 延々とつづく砂の世界には何の気配もない。 彷徨いつづける私を救うのは…。
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