II

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II

すでに雨はあがっていたけれど、僕らは玄関の前で散々に待たされて、まとわりつく湿気の多い暑さにげんなりしていた。 もう何回めかっていうチャイムの音は暑さを増長させ、さらにさらに僕を滅入らせた。 やっとドアが開くとひんやりとした空気が流れて僕らを取り巻く。ぼんやりとした表情で氷月は先生をしばらく見つめ、ぼくに視線を移すとやっと、あぁ…という顔をした。 自分から言いだしたくせにもう忘れてる… もう、ほんっとやだ。 すこし冷えすぎている感のある部屋のなかで、氷月の周囲をいっそうつめたい空気が包んでいる。 着ているものはラフになっていたけれど、やはり黒ずくめだった。 髪をひとつにしばっていて、細いくびすじの白さが急に胸にせまる感じがした。
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