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暗黒が追ってくる。 走っていても、転んでも、頭を抱えてやり過ごそうとしても、それはスピードを上げたり、私がまた立ち上がって走り出すのを待ったりしながら、一定の距離を保って追いつづける。 飲み込まれるような闇。 すべてを否定する闇。 私の存在すらも許さない闇。 たえきれずに悲鳴をあげる。 目覚めても、意識の混濁のなかで呼吸すらままならない身体を、あたたかで確かな腕が抱き寄せた。 「だいじょうぶ、ここにいる」 ひとりではない、ひとりではない。 顔をつよく押しつけると、その肩は煙草と日向の匂いがした。 どこかなつかしい匂い。 安堵する。 これもまた、夢なのか。 それとも…
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