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I
僕はいま、彼女…氷月と暮らしているけれど、少し前までは先生の研究室にいたんだ。その前の前は、先生の自宅。
先生というのは氷月の通う大学の助教授で、もともと僕は誰だかのプレゼントとして先生の奥さんに贈られたものだ。
最初のうちは奥さんは毎日水をくれたし、にっこり笑って見つめてくれたりもしたけれど、まるで成長しないかわりばえのしない僕はお気に召さなかったらしく、あっと言う間に裏庭行きで存在すら忘れ去られることになった。
女は怖いよ。
やさしげな顔で、やわらかな手で、こんなにも残酷だもの。
途方に暮れそうなぐらい寒々しい裏庭から、先生が僕を救い出してくれた。大きな手が瀕死の僕を連れ出し、ワガママな奥さんですまないね、と気弱な笑顔は言った。
そうして、僕は先生の研究室で息を吹き返した。
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