第6章 もっと強く

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翌日、一郎の命令で四郎はまた赤の拠点に向かったが、他の戦士は沼に行った。昨日最後に見た龍はまだ沼の中にいるはずだが、一郎はその龍を刺激するような球を打つことはなかった。3人が並んで球を打ち出し続け、その後ろで五郎が待機する。一郎、次郎それぞれと2人きりなら話が出来るが3人だと話し難く、かといって後ろにいる五郎にも話し掛けづらくて黙って単調な作業を繰り返すことに三郎が疲れてきた頃、一郎が休憩の指示を出した。しかし休憩と言っても食事はしないし、お茶を飲むわけでもない。ただ適当な岩に腰を下ろすだけだ。 「ねえ、雑魚の駆除って意味あるの? これだったら訓練場で龍と戦ってる方が――」 「沼の底に住む龍に球を命中させるには、雑魚は少ない方がいい」 「赤い谷みたいにこれさえ倒せばいいってやつないの?」 「ない」 「じゃあ……全部いなくなるまでこの作業続けるわけ?」 「いや。準備が整うまでだ」 そう答えると、一郎は立ち上がった。 「次郎、後は任せる。三郎、退屈したなら強い球を打つ練習をしろ。どうせ龍には届かない。安心して練習に励め」 ムッとした三郎が睨み付ける間もなく、一郎は何処かへ走り去ってしまった。 「あいつ何処行ったの?」 三郎は次郎に尋ねたが、彼は黙っていたので代わりに五郎が答えた。 「四郎の所かもしれないな」 「赤の拠点? ねえなんで四郎だけ独りで練習してるの? おしゃべりしてた罰?」 「そんなわけがないでしょう」
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