第6章 もっと強く

23/37
前へ
/962ページ
次へ
苛立ったように答えると、次郎は立ち上がった。 「前回の戦いでここの龍を倒したのは斧の戦士です。四郎は、期待されているのですよ」 不機嫌な声で話しながら、次郎は矢を放った。さっきまでより大量の矢が飛び出し、沼から無数の雑魚が跳ね上がるのを見た三郎は、五郎にそっと問い掛けた。 「ねえ、次郎怒ってる?」 「ああ怒ってるな。もっと怒られる前に、おまえも練習を始めろ」 三郎は次郎と離れて立ち、強い球を打つ練習を始めた。強いかどうかわからないが、大きな球なら作れる。ただ、それは遠くへ飛ばず、沼に届かない。すると横目で見ていた次郎が言った。 「もっと沼に近付いてみたらいかがです?」 「いやそれは……万が一ってことが……」 五郎は止めたが、三郎が言われた通り前に出ると次郎はチラリと三郎を見た。どうせ龍には届かない、彼もそう思っているらしい。三郎はムキになって力一杯剣を振った。一郎が限界と定めた距離の半分の位置からなので、沼に球を落とすことは出来たが、上がって来たのは雑魚数匹だった。 「チッ」 悔しくて、繰り返し打ってみたが結果は同じだった。 「おい三郎、前に出過ぎだぞ」 ハラハラしながら見守っている五郎に対し、次郎は淡々と自分の作業を続けていたが、暫くしてようやく三郎に声を掛けた。 「一郎様が龍を引き上げた一撃を、覚えていますか?」 「え?」
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加