第6章 もっと強く

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「あなたの球は、丸すぎます。それでは龍の鱗を切り裂くことはおろか、風を切ることすら出来ません」 無駄に重いだけで攻撃力がない。そんなことはわかっているが、どうしたらいいのかさっぱりわからず三郎が戸惑っていると、次郎は三郎に歩み寄り手を出した。 「剣を貸してご覧なさい」 三郎は半信半疑で次郎に剣を手渡した。 「わかりやすいように沼の縁に落としますから、よく見ていて下さい」 そう言うと、次郎は片手に弓を持ったまま刀を構え軽く振り下ろした。すると三郎が打つのと全く違う薄く鋭い光が飛び出し、沼の縁の草を刈った。 「えっ、今どうやったの?」 「よく見てなさいと言ったでしょう。もう一度やります。もう少し後ろから見ていなさい」 三郎は、言われた通り次郎の斜め後ろに立ってじっと眺めたが、次郎の腕と剣の動きが滑らかで素早いこと以外よくわからなかった。首を傾げる三郎に剣を返しながら次郎は言った。 「剣を上下左右に無駄に振ってはいけません。後は振り出す瞬間の速さです」 「うん、わかった」 本当はよくわかっていなかったが、三郎は次郎の真似をしてみた。すると確かに球の形が変わった。 「あっ、ちょっと出来た!」 三郎は喜んだが、元の位置に戻って作業を再開していた次郎はそっけなく答えた。 「それをもっと大きく鋭くせよ、というのが一郎様のご命令です」 「は?」
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