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「強い球を打つ練習をしろと言われたでしょう。強い球とはそういうことです」
「ええ?」
鋭くなった球は、さっきより小さくなった。鋭さと大きさは、むしろ反比例するように思える。
「一体どうやって――」
「さあ。私にはわかりかねます。それは剣の戦士であるあなたにしか出来ないこと。そして――」
次郎は言葉を句切って大きく弓を引いた。すると一本の太い矢が飛び出した。矢が沼をえぐるように落ちた次の瞬間、沼が大きく揺れた。
「三郎、逃げろ!」
五郎が叫んで駆け寄り、三郎も逃げ出そうとしたが、次郎は冷静に再び弓を引き、沼から上がろうとした巨大な生物に向かって矢を放った。矢は大きく開かれた巨大生物の口から体内を貫いた。悲鳴を上げたその口の中に次郎が続けて矢を放つと、巨大生物は光の球と化して砕け散った。
「ただのワニです。でも龍を刺激してしまったかもしれません。今日はもう終わりにしましょう。五郎さん、城に直行する転送紋をお願いします」
「は、はい」
五郎は赤の拠点への転送紋を消して城への転送紋を描き始めた。
「それって……一郎と五郎にしか描けないの?」
「ええ。簡単そうに見えるでしょうが」
見透かしたように冷ややかに答えられて、三郎は恥ずかしさに頬を染めた。
「そ、そんなこと思って――あ、それよりさっき言いかけたの何ですか?」
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