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「そりゃまあ痛いけど大したことないって。それより濡れるし、寒いよ」
「後で風呂に入ればいい」
充分洗い流した後、五郎は逃げないように三郎の腕をガッチリ掴んで傷を確認した。
「ああ……まあ大したことはないが――」
「ならいいだろ、もう放し――うわっ!」
放しては貰えず、三郎は五郎に傷を舐められた。
「止めろ、気持ち悪い!」
「失礼だな。これは治療だ」
「嫌だ、放せ!」
三郎は五郎の手から腕を引き抜こうとしたが、びくともしなかった。しかし暴れ続けていると、突然五郎に開放された。三郎は後ろによろけたが、別の手に抱き留められた。
「何の騒ぎや?」
「ああ四郎、戻ってたのか。いや、こいつが沼の水を浴びたから治療を――」
「いい、もう治った!」
三郎は四郎の手を払うと、部屋に逃げ帰ってしまった。五郎はその後ろ姿を見送りながらため息をついた。
「俺に舐められるくらいなら怪我してた方がマシか」
「まあ、オッサンに舐められるのは気持ち悪いやろな」
四郎は冗談で言ったつもりだったが、真に受けた五郎は益々落ち込んだ。
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