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「四郎もそう思ってたのか」
「嘘や、嘘やで五郎ちゃん。ああ……アレや、三郎は女も知らんのやろ。体舐められるなんて初めてだったんちゃう?」
「初めてがオッサンとは気の毒なことしたな……」
「そんなことないて。あいつもホンマは五郎ちゃんに感謝してるて。照れてるだけや」
「そうだといいがな……ところで四郎、おまえの方はどうなんだ? 順調か?」
「ああまあ……ぼちぼちやなあ」
四郎も三郎と同じように伸び悩んでいた。地面に球の跡を残すことは出来るようになったが、この程度ではダメだと一郎に言われた。
その翌日も四郎は独り赤の拠点で練習を続けたが、球はなかなか強くならない。
「ああもう、わからん!」
叫びながら投げやりに打ち出した球は、それまでより一回り大きく鋭いものになり、若干深く地をえぐった。
「え、なんで?」
「今のタイミングでいい。もっと気持ちを込めてみろ」
いつの間にか様子を見に来ていた一郎にアドバイスされた四郎は、振り返って首を傾げた。
「気持ち……ですか?」
「わからなければ、さっきみたいに叫んでみろ」
「聞いてはったんですか……」
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