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一郎の前でわからんとは叫べず、四郎はウォーとかワーとか叫びながら打ってみたが、さっきのような球は出なかった。
「アカン、さっきのまぐれでしたわ」
「まぐれでもなんでも、おまえは出来た。一度出来たことは、必ずもう一度出来る」
出来ないからまぐれなんやと頭の中でツッコミを入れてから四郎は言った。
「あの……頼ってばかりで申し訳ないですけど、一郎さんご自身が龍を倒した方が早いんじゃ……最初の日に訓練場で光飛ばして赤い龍一瞬で倒して見せてくれたやないですか」
「沼の龍には驚異的な再生能力がある。薄く真っ直ぐ切断すれば落ちる前に繋がってしまう」
「ええっ、ホンマですか?」
「出来るだけ大きな爆弾のような光で組織を破壊するしかない。それには重く厚い武器、つまり斧が一番だ」
「はあ……」
四郎が手にした斧を確かめるように眺めていると、一郎は背後から四郎の両肩を掴んだ。
「おまえは出来る。出来なければ困る。己と己の武器の力――そして俺を信じろ」
低く落ち着いた一郎の声は、暗示のように聞こえた。一郎の手が肩から離れると、四郎は目を閉じて言われた言葉を繰り返してみた。
「俺は出来る」
でもまだ確信出来ない。正面の沼を見据えて、四郎はもう一度自分に言い聞かせた。
「俺は、出来る」
そして今度は斧を振り下ろしながら叫んだ。
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