第1章 火照る体

11/13

224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
昔々、この世とあの世は一つでした。 世界の中心には龍と暮らす龍人がいて、人は世界の端でひっそりと暮らしておりました。 ある時龍人は、人を全て殺してしまおうと邪悪な龍を世界の端に送り込みました。 その時5人の勇者が立ち上がりました。 彼等が懸命に戦っていると、金色に輝く龍が現れて邪悪な龍を倒し、この世を世界から切り離してくれました。 けれど時は過ぎ、いつしかまた世界はつながり始めました。 臥龍山の奥深く、時折響く鳴き声は、あの世の龍の声なのです。 『世界がつながったら、また龍が襲ってくるの?』 そう尋ねた三郎は、父に問い返された。 『おまえはどうする? 龍と戦う勇者になりたいか?』 『うん、なりたい。僕、悪い龍をやっつけるよ』 そうかと答えて、父は三郎の頭を撫でた。でも父はどうするのか語らなかったし、三郎も尋ねなかった。龍が攻めてくるなんて、幼い三郎にも作り話としか思えなかったからだ。その話の中に実在する山の名前が出て来ても。 三郎は、その名を呟いた。 「臥龍山……」 声に出した瞬間に、今日の記憶が押し寄せてきた。 黒い巨岩。 近付こうとして押し戻しされた感覚。 そしていつもと様子が違う光。 「三郎、あなた何か――」 「ねえ、光は? 美濃家も戦士の血筋なの?」 「光くん?」
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

224人が本棚に入れています
本棚に追加