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そして妄想する余裕を失った四郎の頭の中から淫らな姿の次郎が消えた頃、本物の次郎はもう城に戻っていた。
(一郎様は、いつお戻りになるのだろう)
一郎の部屋に向かってため息をつくと、部屋の戸が叩かれた。
(一郎様?)
次郎は立ち上がり急いで戸を開けたが、立っていたのは三郎だった。落胆しつつ平静を装って次郎は尋ねた。
「何か?」
「あ、あの……」
「用件があるなら早く言って下さい。私は仕事中です」
「仕事?」
「今日の記録です」
そう聞いて三郎が部屋を覗き込んでみると、机の上には確かに紙と筆があり、自分の部屋にはない書棚には沢山の書物が並んでいた。
「へえ……そういうの過去の分も全部あるわけか」
「三郎!」
次郎の腕の下をくぐり抜けて部屋の中に入った三郎は、書棚の前に立って尋ねた。
「この中にその……前回の沼の龍の記録もありますか?」
年代順に並べられた記録らしき書物は見つかったが、歴史を知らない三郎にはどの辺りを見たらいいのかわからない。
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