第6章 もっと強く

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「この前の話……俺達の体が男でもあり女でもあるって……」 三郎は恥ずかしそうに俯いた。短い髪では隠せぬ耳は真っ赤に染まっている。 「ああ、その話。もう四郎にでも教えて貰ったと思っていました。聞いたらきっと、喜んで教えてくれますよ」 三郎の気持ちに気付きながらあえてそっけなく次郎は答えたが、三郎は真っ直ぐ次郎を見詰めながら言った。 「俺は、あなたに教えて貰いたい」 三郎の熱い視線を受けながら、どうしようかと考えていた次郎は、廊下に人の気配を感じた。今度こそ一郎が帰って来たに違いない。次郎は、立ち上がりながら顔を近づけて、三郎に囁いた。 「では、他の人には決して聞かないで下さい。今度ゆっくり教えてあげます」 「今……じゃなくて?」 次郎は部屋の入り口に立つと三郎を振り返って人差し指をそっと唇に当てた。そして静かに戸を開き、こちらに向かってくる一郎に声を掛けた。 「一郎様、お帰りなさいませ」 「ああ」 次郎の部屋の前まで来ると、一郎は開いた戸の奥に視線を送った。 「三郎もいるのか。調度いい。準備が整った。明日もう一度龍を呼び出す」 「あの龍と戦うの?」
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