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第7章 失った輝き
翌日、久しぶりに5人揃って沼に向かった。
いつもは手ぶらの五郎が、今日は大きな荷物を背負っている。
「五郎ちゃん、なんやその荷物」
「沼の水を中和する薬液と処置を施した布だ」
「それで沼を中和するんか?」
「まさか。これだけで足りるならとっくに使ってる」
「そんなら――」
「四郎!」
五郎と並んで話しながら歩いていた四郎は、一郎に腕を引かれた。
「余計なことに気を取られるなと言っただろ」
「はい、すいません。あ、あの一郎さんもう――」
放してくれていいんじゃないかと問いかけたが、一郎は四郎の腕を放さなかった。
そのまま早足で進み、他の戦士と少し離れた所で一郎は呟いた。
「龍に集中しろ。おまえの力に全てが掛かっている。いいな?」
「はい……」
四郎が素直に返事をすると、一郎は腕を掴んでいた手から力を抜いたが、沼に着くまで放すことはなかった。
三郎は、数歩離れた場所からそんな2人の背中を見ていた次郎の袖を掴んで宣言した。
「俺、四郎になんて負けないから」
熱く見詰める三郎に、次郎は作り笑顔で頷いた。
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