第7章 失った輝き

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(何の役にも立てないなんて嫌だ) そう思うと同時に、三郎は龍に向かって駆け出した。 「こんな奴、直接切っちまえばいいだろ」 「よせ、三郎!」 止める間もなく、三郎は龍に近づき剣を振り上げた。決してくびれてはいない龍の首は、剣の長さより太かったが、そんなことはまるで気にならなかった。 切り落とせると確信していた。 叫び声を上げながら三郎が剣を振り下ろすと、剣は大きな赤い光に包まれた。 「あれは?」 光で巨大化した剣は、他の戦士が呆然として見守る前で、龍の首を切り落とした。龍は切断されても首を失った体でしばらく暴れ回っていたが、やがて大人しくなった。 「大丈夫か、三郎」 自分が繰り出した技に驚いて立ち尽くしていた三郎は、五郎に抱きかかえられてその場から離れた。そして点検するように頭から頬、首へと大きな手を動かしながら問い掛けられて、三郎はようやく一郎が言っていたことを思い出した。 沼の外から来たものは何であれ溶ける 人も、武器もだ はっとして剣を確認しようとすると、駆け寄って来た一郎に奪われた。一郎は素早く五郎が運んでいた薬液を取り出し、剣に掛けた。 「一郎、俺の剣……」 一郎は無言で龍の体液をぬぐい去る作業を続けた後、剣を三郎に突きつけた。 「沼に向かって、振ってみろ」
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