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「やってみなければわからない。その剣は、ただの剣ではないからな」
でも直る可能性はある。それに他にも人がいるという話に、三郎は勇気づけられた。
そして乱立する岩の迷路のような道を進んで行くと、一際大きな壁のような岩が現れた。そこに一郎が指で記号を書くと、岩は左右に分かれて動き始めた。
「扉?」
「ああ。早く入れ」
踏み入れた直後、背後で岩が閉じた。目の前には、人間界の田舎のような景色が広がっていた。
「畑だ。ねえ、ここの人達はご飯食べるの?」
「ああ。人間だからな」
「えっ、でも俺達は――」
「戦士は人間であって、人間ではない。飲食のもてなしは受けるな」
「食べたらどうなるの?」
「知りたければ、食べてみればいい」
恐らくろくなことにならない。一郎が前もって注意することは絶対に守るべきだということを、三郎もようやく理解するようになった。
畑の向こうに集落が見える。だが一郎はその方向ではなく、竹林に入って行った。そこを抜けた場所に、一件だけ家があった。
「あそこ?」
「ああ。唯一の鍛冶屋だ。決して怒らせるな」
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