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気難しい男を想像した三郎は黙って全て一郎に任せようと思ったが、玄関を叩くと中から現れたのは若い女性だった。一郎の顔を見ると、彼女はうっとりした声を漏らした。
「まあ、この前の……」
「源三様はご在宅ですか?」
「はい、おります。お父さん!」
呼びかけながら一度家の奥に戻った彼女は、再び現れて2人を中へ通した。
「こちらへどうぞ」
客間に通されて待っていると、娘に連れられて無精髭を生やした中年男がやって来た。
唯一の鍛冶職人、源三だ。
かなりの大柄で、まくり上げた着物の袖から突き出た黒い腕は筋肉で膨れ上がっている。
「またあんたか。今度は何だ?」
「打ち直して頂きたい剣を持って参りました」
一郎に合図されて、三郎は恐る恐る剣を差し出した。
受け取った源三は、眉を顰めて剣を眺めながら呟いた。
「これは酷いな。何をしたらこうなる?」
「剣を溶かす龍に触れました」
「あんた等そんなのと戦ってるのか。もうこんな剣捨てて帰ったらいいんじゃないか?」
言い返さずに黙っていろと三郎に目で合図してから、一郎は尋ねた。
「打ち直しには、どれ位掛かるでしょうか?」
「報酬の話か?」
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